Side Story - そのころ、どこかで。
(※第13回更新時掲載日記)
遺跡外にある小さな小屋。
長身の女性が大きな箱を引きずってやって来た。
「姉貴、居る?」
彼女はノックもせず扉を開ける。
部屋の中にはエプロンを付け、箒を持った女性が居た。
…どうやら掃除中のようだ。
「ん?あ、雪音。お帰り…どこ行ってたの?」
姉貴と呼ばれたこの女性。以前世羅を助けた事もある、和葉の姉である雪乃だ。
「和葉が見つかった、って書いたじゃないか」
引きずってきた箱を室内へ運び入れ、ポケットからタバコを取り出す。
「それは分かるんだけど。どこに行ったかちゃんと書いてくれなきゃ困るんだ」
「『修行に出てくる』って一年近く戻ってこなかった姉貴に言われてもな」
「そのときは、そのときだって」
「似たような物」
「…う。…で、肝心の和葉はどこなの」
タバコを燻らせ、引きずってきた箱に視線を落とす。
「…………」
「…………」
箱と雪音との間を往復する視線。
「……えーっと」
ふっと煙を吐き出す。
「大丈夫。生きてる」
雪乃が大きくため息を吐いた。
「紛らわしい運び方してこないでよね」
「悪い。ちょっと運び辛かったから」
「運び辛いって…」
箒を置き、蓋を開ける。
そこには見慣れた弟、和葉が横たわっている。
ただ、普通と違う点は…
「…冬眠中?」
その身体は氷に覆われ、まるで水晶の中に居るようだ。
「死ぬよりはマシだろうと思ったんだろ」
よくよく見れば、体中のあちこちに深い傷が見える。
止血のために自らの体を氷で覆い、冬眠状態に陥ったようだ。
「…まぁ、命あってのなんとやらとも言うけど」
「ということで。後は姉貴に任せる」
そのまま背を向け、外へと向かう。
「ちょっと、任せるって!」
「如月の家にも報告して来ないと行けないしな。
それにコイツがこの状況じゃ、あの子も戻るとは言わないだろうから。説得してくる」
「……それもそうだね。お願いするよ」
「じゃ、行ってくる」
雪乃は妹を見送り、和葉の治療に当たることにした。
氷の上から一通り治癒魔法を施し、傷は目立たなくなった。
しかし、氷は溶ける様子が無い。
「どうやったら起きるのかな…」
「…まさか、お姫様のキスって事は、無いよね?」
姉よ。余計なことは考えるな。