« 65日目。 | メイン | 66日目。 »

Heat of Battle 後編

更新始まったので続きを掲載。
やっぱり結果に載せたものそのままです。

純粋に見て、力だけで言えば和葉の方が有利である。
剣を振るう技術と、身軽さ・素早さでは世羅が有利。
そのため、世羅は和葉の攻撃を受けるということはせず、回避することに専念していた。
和葉の場合、世羅に攻撃を当てることさえできれば勝ち...
つまり、手数を出していけばいつかは当たり、そこで勝負が終わると考えていた。
だが実際は世羅の回避力が勝っており、和葉の攻撃は空振りを続ける。
世羅はその隙を突いて細かく攻撃を繰り出す。
その攻撃は殆ど避ける事ができず、剣で受けることになる。
...結果。確実に和葉の体力だけが消耗していった。

そんな二人の攻防は暫く続いた。

和葉の剣は全て紙一重に見えるが、実は余裕を持って世羅に避けられている。
逆に合間を縫って繰り出される剣は受け止めるのが精一杯と言う状況になって行く。
...そして、和葉の息も上がってきた。

キィン!

金属同士がぶつかり合う音が響く。
和葉が振り下ろした剣を、世羅が始めて受け止めた。
鍔迫り合いのような状況になり、二人はお互いの吐息が聞こえる距離まで近づく。

「息が上がってますわよ?」
「それはまぁ...病み上がりですし...」

病み上がりとは言えども、やはり力の面では和葉が勝っている。
じりじりと世羅が押されていく。
その体勢から世羅は全身の力を抜き、横へと体を滑らせる。

「うわっ!?」

急に抵抗が無くなり、和葉の体勢は前のめりになる。
後ろに回りこみ、当身の要領で軽く背中を押されると、簡単に地面へと倒された。
起き上がるわずかな間に世羅はまた少し距離を取り、剣を大上段へと構える。
構えた剣は闇の黒いオーラをゆっくりと纏っていく。
半立ちの状態から向き直った和葉は、その様子を見て慌てた。

「ちょっ...そ、それは...」
「...安心していいわ。ちょっと痛いだけですから」
「ちょっとって!」

世羅が構えた剣を一気に突き出す。
纏った闇はそのまま和葉へ襲い掛かる。
その姿はまるで牙のように。

(避けられない...なら...!)

和葉は左手を掲げ、右手で小さく十字を切った。
すると薄いクリーム色の光が左手から溢れ、和葉を覆った。

ソウルファングが突き刺さると、その光は割れて砕けた。
だが、威力を軽減するには十分だった。

「まともに刺さって怪我でもしたらどうするつもりですかっ!」

苦笑いを浮かべつつ、和葉が叫ぶ。

「その時は、傍について看病してあげるつもりでしたわ」
「...そ、そうですか...」

何とか立ち上がり、剣を構えなおす。
まだ二人の距離は一足では埋まらない。
この距離を生かして先手を打ったのは世羅だった。

「...お腹も空きましたし、これで終わりにしましょう」

すっと左手を伸ばすと、足元から黒い蝶が何匹も舞い上がる。
その蝶は間も無く和葉を取り囲むと、一斉に襲い掛かった。
そしてその蝶の羽は和葉を真っ二つに切り裂き...霧となって弾ける。
その霧はあっという間に濃度を増し、世羅を覆い包む。

「...身代わりとは予想外でしたわね...」

視界を奪われた世羅は目を閉じ、気配だけを頼りに和葉を捜す。

(--右!)

何かが動く気配を感じ、そこに剣を振るう。
手ごたえはあった...が、軽い。
引っかかったのは投げられた和葉の上着であった。

(...これは私の負けですね)

そう確信し、剣を手にした力がすっと抜ける。
それを知ってか知らずか、和葉が世羅の剣を力強く弾く。
弾かれた剣は弧を描き、地面へ突き刺さる。
和葉はそのまま世羅の目前に剣先を突きつけた。

「これで...勝負ありですよね」
「...ええ」

こうして二人の練習試合は幕を閉じた。


「...なんで最後に力を抜いたんですか?」
「何のことかしら」
「......ずるいです。僕には散々本気を出せと言ったのに」
「...本気でしたわよ」

そう言うと世羅は歩き始める。

「......本当はあんな技も使うつもりありませんでしたから」
「...え?何か言いました?」
「いえ、何でもありませんわ。帰りましょう」

石の上に座っていた咲夜に目を向ける。
...そこで、咲夜はゆっくりと舟を漕いでいた。

「............」
「朝、早かったですからね...」

世羅と和葉の二人は顔を見合わせて苦笑いすると、
起こさないようにそっと和葉が抱き上げ、抱えていた薬箱は世羅が持った。
そして三人はゆっくりと帰路に付いた。


「ところで罰ゲームですけど」
「......ええ。言ってくださいな」
「年末年始、遺跡には潜らずに僕の傍に居てください」
「............それだけ?」
「はい。それだけです」
「......罰でも何でもありませんわね」
「ど、どうしてですか?」
「...喜んで受け入れられる事のどこが罰ですか...」

世羅が和葉の腕に手を回す。

「分かりました。暫く、遺跡外に留まりますわ」

(...たまには探索を忘れて、ゆっくり過ごすのも悪くありませんわね)


三人(+二匹)の一年が終わろうとしている。


# クリスマスイベント「星降る夜に」に続く...?

コメントを投稿

タイトル

    情報/検索系
    参加者Blog